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ビクトル・エリセ監督の『エル・スール』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想。
 
EL SUR』(82年)
監督・脚本:ビクトル・エリセ 
原作:アデライーダ・ガルシア・モラレス 
撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ
出演:オメロ・アントヌッティ、ソンソレス・アラングーレン、イシアル・ボリャン、オーロール・クレマン 

 
再見。
父と娘の物語には昔から妙に惹かれる。
この映画もそうだが、小説でもこれまでで最も感動した本は大学生の頃に読んだ獅子文六の『娘と私』である。
『娘と私』は読んだ時の印象が強烈すぎて、それ以来一度も読み返していないが、実際自分に娘が生まれた現在、読み返したらどんな感想を抱くだろうか。(この小説が1962年に映画化されていることを知った。堀川弘通監督、山村聡、原節子共演。是非とも機会があれば観てみたい)

この『エル・スール』にも同じような思いがあった。
初めて観た時の感動が忘れられないだけに、再見するのが怖いという気持ちがかなりあった。
再見するとだいたい初めて観た時の感動は薄れるものだからである。

そんな中、紀伊国屋書店から出た新しい国内盤DVDを入手できたので、久しぶりにこの作品を観直したが、やはりこの映画は素晴らしかった。
以前からこれは古今東西で最もすばらしい映画の一本だと思っているが、その思いに今も変わりはない。
父と娘のダンスシーン、二人きりのレストランのシーンなど実に余韻が深い。
娘役の二人の女優も素晴らしい。
父親役のオメロ・アントヌッティはこの映画を観る限り、最高の名優だ。
ラストもさり気なくも感動的。

ビクトル・エリセ監督作品としては『ミツバチのささやき』は以前スクリーンで観たことがあるが、この作品はソフトのみ。
いつかスクリーンで観てみたい。

ちなみに新しい国内盤DVDは、以前観た旧国内盤(東北新社)とは比較にならないくらい画質は良い。

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あのフレンチ・ノワールの大名作『シシリアン』(69年。アンリ・ヴェルヌイユ監督)の国内盤DVDが6月25日、廉価版で発売になります。

驚きの価格は1490円、しかも今ならアマゾンで1102円です。
私はもちろん購入済みですが、初めて国内盤DVDが発売された時は確か3990円でした…。

336021_001.jpgジョニー・トー監督の『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』をスクリーンで観た感想。

Vengeance 復仇』(09年)
監督:ジョニー・トー
脚本:ワイ・カーファイ
撮影:チェン・シウキョン
出演:ジョニー・アリディ、アンソニー・ウォン、ラム・シュ、ラム・カートン、サイモン・ヤム

スクリーンで映画を観るのは久々です。
こと新作映画に限れば、アラン・コルノー監督の『マルセイユの決着(おとしまえ)』以来かもしれません。
このところジョニー・トー監督の作品をDVDで観る機会があり、どれも大変面白かったので、今回、最新作をスクリーンで観られるのはとても楽しみでした。
一部情報ではメルヴィルの『サムライ』に影響を受けているとの話もあり、もちろん、その楽しみもありました。

主演はフランス人俳優・歌手のジョニー・アリディ
しかし、私はこの人が出た映画はほとんど観たことがありません。
その中ではパトリス・ルコント監督の『列車に乗った男』(02)は良かったのですが、共演のジョン・ロシュフォールの方が数段魅力的でした。

ともかくも、このこの『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(もうちょっと簡潔なタイトルにできなかったのか?)は、娘婿、孫二人を殺し屋組織に殺された(娘は辛うじて生き残った)ジョニー・アリディが、その復讐を誓うというのが簡単なストーリーです。

336021_004.jpgところが、主役のジョニー・アリディよりも、アンソニー・ウォン、ラム・シュ、ラム・カートン3人の殺し屋たちの方が遥かに魅力的に思えました。
どう贔屓目に見ても、あの3人たちの方が人間味といい、キャラといい、描写のカッコ良さといい、“こっちの方が主役じゃないか!”と思ってしまったほどです。
まぁ、残された者が殺された家族の仇を討つという、いかにもありがち復讐話よりも、それをあくまで仕事として、何があっても男気で請け負う3人のストーリーの方が魅力的に見えてしまうのはある意味当然かもしれませんが…。

あと、映画の簡単な印象だけ言うと、とても面白い映画で、好きな映画ですが、私個人の生理的感覚からすれば、銃撃シーンが全体的に長すぎるきらいがあるようにも感じました。
特にラストなど。
あと、ジョニー・アリディの記憶喪失の件なども、全体のストーリーの中での意味合いがもう一つ弱いようにも感じました。
前半に出てくる刑事役のマギー・シュウなど、刑事にしては美人過ぎるものの(笑)、いかにも刑事らしい隙のなさそうな物腰が存在感を発揮しているので、出番が少ないのが残念でした。
そういった意味において、以前観た、素晴らしく魅力的な『エグザイル/絆』や『ザ・ミッション/非情の掟』などに比べますと、ジョニー・トー監督作品としては、この作品は分が悪く感じます。

それと、『サムライ』やメルヴィルの影響が語られる監督だけあって、この映画にはメルヴィル・ファンなら思わずニヤリとするシーンが(特に前半)続出します
思いつくままに挙げてみますと(カッコ内は元ネタと思われる作品)

●殺し屋が仕事に使った道具を川に放るシーン(『サムライ』)
●仕事をやり遂げた殺し屋が部屋を出た瞬間に人に顔を見られる(『サムライ』)
●ホテルの鍵を表から外すシーン(『リスボン特急』)
●森の中で敵二人に迫られ、絶体絶命かと思われるものの、その後ろに味方が助けに来るという構図(『仁義』)
●首実検のシーン(『サムライ』)
●拳銃を調達するオヤジの存在(『サムライ』)

思い出せる限りではこんなところでしょうか。
どちらかというと、これらのシーンは映画全体のストーリーには大きな影響がなく、ジョニー・トー監督が遊びの感覚で撮っているという印象の強いシーンでした。

今回はカーティス・メイフィールドのアルバムについて。

彼のアルバムはファンにとってはどれも同じくらい大切なものだが、一般的に評価の高いのはソロ・デビュー・アルバム『カーティス』(70)、『ライヴ!』(71)、『スーパーフライ』(72)といった70年代前半のアルバムであろう。
実際、いずれ劣らぬ大傑作といっていい。

中でも『スーパーフライ』は有名で、国内盤もこのアルバムだけ何枚も出ているが、実は少し前までこのアルバムの良さがよく分からなかった。
その理由は現行CDのボーナストラック(11曲)が多すぎるせいかもしれない。
曲数が多すぎてCDで通して聴くとツカミ所が分かりにくいのだ。
それに気付いて以来、オリジナルの9曲だけ聴くようにしたら、このアルバムの偉大さが遅ればせながら理解できた次第。
同名映画のサントラだが、カッコ良さと叙情性の融合されたサウンドの魅力がたまらない。

もちろん、『ルーツ』(71)と『バック・トゥ・ザ・ワールド』(73)も素晴らしい。
『バック・トゥ・ザ・ワールド』のタイトルトラックはカーティスの多くの曲の中でも、個人的にはフェイヴァリットナンバーである。


先に挙げた『ゼアズ・ノー・プレイス・ライク・アメリカ・トゥデイ』(75)は間違いなく最高傑作の一枚だが、音数の少ない緊張感に満ちたかなり地味な内容なので聴く人を選ぶかもしれない。

そこで個人的に推したいのが『ガット・トゥ・ファインド・ア・ウェイ』(74)である。
一般的にはほとんど知られていないアルバムだが、カーティスのアルバム中でも1、2を争うくらい好きなアルバムだ。
ワウペダルを使ったギターサウンドの洗練さ、ストリングスの強力なメロディなど、サウンド面でも“都会的なソウル”というカーティス・サウンドの個性を完全に確立したアルバムであり、楽曲の充実ぶりも大変なものだ。
とりわけ『ソー・ユー・ドント・ラヴ・ミー』は隠れた(?)超名曲。
ストリングスの使い方も絶妙だし、曲の後半でカーティスのコーラスが重なるあたりは涙モノの素晴らしさだ。


このアルバムの国内盤CDが廃盤状態なのはなんとも残念である。

彼の音楽の全体像を捉えるにはライヴ映像が手っ取り早いかもしれない。
音楽的にピークだった70年代初期の映像が国内盤DVDとして出ていないのは残念だが、輸入盤で出ている『Movin on Up: Music & Message of Curtis Mayfield 』はカーティスに関心のある方は必見。
ドキュメンタリーとライヴ映像が組み合わされた、特典映像まで合わせると三時間に渡るボリュームのある充実した内容で、インプレッションズの他のメンバーやカーティスの細君、カーティス本人などのインタビューと70年代初期の鼻血もののライヴ映像が多数収録されている。
英語字幕があるのでドキュメンタリーの内容も理解しやすいし、輸入盤DVDの規格もリージョンフリー
 

入手しやすいところでは、モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴDVD『ライヴ・アット・モントルー 1987』は代表曲が並んだセットリストの親しみやすさ、バンドの好調さ、観客の反応の良さもあって十分に楽しめる。
ウィブ・オンリー・ジャスト・ビガン』(カーペンターズの『愛のプレリュード』のカバー。厳密に言うとカーペンターズのヴァージョン自体もカバーなのだが…)から代表曲『ピープル・ゲット・レディ』へと続く流れはライヴアルバム『ライヴ!』(71)と同様で、これを映像で味わえる幸福感は格別であるし、アタマが『バック・トゥ・ザ・ワールド』というのもタマらない。

カーティス・メイフィールドは1942年シカゴ生まれ(~99年)。
58年にR&Bコーラス・グループ、インプレッションズのメンバーとしてデビュー、70年以降ソロ・アーティストとなっている。
マーヴィン・ゲイらと共に70年代の“ニューソウル”を牽引した重要な存在であり、当時のアメリカの黒人が抱える諸問題を取り上げた政治的なメッセージソングを数多く歌った。
70年代後半以降その傾向が弱まったとはいえ、世の中の不条理に音楽で物申す、いわゆる“社会派”のアーティストであり、なにより“愛の大切さ”を生涯かけて訴え続けた“愛”と“魂”のアーティストだったと言えるだろう。

本来、私は“ラヴ&ピース”系のアーティストやいわゆる社会派と言われるようなアーティストは苦手なのだが、カーティスは別だ。
一般的に、個々の楽曲としては『ピープル・ゲット・レディ』(65)や『ムーヴ・オン・アップ』、アルバムとしては『スーパーフライ』(72)や『ゼアズ・ノー・プレイス・ライク・アメリカ・トゥデイ』(75)が代表作として挙げられると思われる。

カーティス・メイフィールドの音楽の魅力は、当然だが何よりもまず第一にその楽曲の素晴らしさである。
ファンキーな作品もラヴ・バラードも何もかもが素晴らしい。
とりわけ、バラードナンバーの素晴らしさは彼ならではとしかいいようのないものだ。
同時にその独特のファルセット・ヴォイスの魅力である。
なんと柔らかく、優しい歌声なのだろう。
これは、おそらく、彼の人柄そのものなのだ。
初めて聴く人は違和感を感じるかもしれないが、その声の魅力に嵌ったらもう抜け出せない。

もちろん、ワウペダルを多用したユニークなギターサウンド、ストリングス、ホーンのセンスの良い使い方など、卓越したアレンジ能力も忘れてはならないだろう。
特に、70年代初期のアルバムによく聴かれるストリングスの緊張感のある響きは独特の魅力がある。
ジャンル分けとしては、ソウルとかファンクとかR&Bとかいろいろ言われるし、おそらくどれにも当てはまるだろうが、その強烈な個性で“カーティス・メイフィールドの音楽”としか言いようのない彼独特のものとなっていると思う。

ここでは個人的に大好きな『THE MAKING OF YOU』(70)と『SO IN LOVE』(75)の2曲をユーチューブから紹介したい。
ここまで美しい音楽が世にいくつあるだろうか。
この項続く


f6f38f0d.gifポピュラー音楽界において個人的に最も敬愛するソロ・アーティストは、男性ではカーティス・メイフィールド、女性ではフランソワーズ・アルディである。
敬愛という言葉は単に“好き”ということとは異なる。
もちろん、その音楽自体好きなことは好きなのだが、それと同等、もしくはそれ以上に“尊敬”というニュアンスが強い。
当然のことながら、若いアーティストに対してはなかなか持ちにくい感情だ。

とりあえず、これから何回かに渡ってカーティス・メイフィールドCURTIS MAYFIELD)に対する思いを綴ってみたいと思う。

男性ソロ・アーティストで私がこれまでの人生で一番よく聴いてきたのはおそらくボブ・ディランだろう。
膨大な数のアルバムが世に出ているが、これまでそのほとんどのアルバムを聴いてきたし、所有しているCDもおそらく一番多いと思う。
10年ほど前には来日公演にも行った。(今年は忙しくて無理だった)
しかし、業界的にもあまりにポピュラー過ぎるというか偉大過ぎて、敬愛という感じではない。

その点、カーティス・メイフィールドとの比較でちょっと迷ったのがブルー・アイド・ソウルの大物ヴァン・モリソンで、楽曲の素晴らしさ、ヴォーカルの魅力でもディラン、カーティスに引けをとらない存在だ。
この人も60年代から息の長い活動を続けており、近年精力的に発表しているアルバムが全盛時に劣らぬ充実ぶりなのもディラン並みである。
日本ではいまだ来日公演をしていないこともあってか、一般的には相変わらず無名に等しい存在だが、欧米では“リヴィング・レジェンド”としてしかるべき評価を受けているようで、近年のアルバムもよく売れているらしい。(もし、ヴァン・モリソンのことを知らなかったらザ・バンドのライヴ・ドキュメンタリー映画『ラスト・ワルツ』(76年。マーティン・スコセッシ監督)に出演した時の『キャラバン』を是非観て欲しい。ちなみに私はザ・バンドの大ファンでもある…) 



しかし、個人的にはやはりカーティスの方が“敬愛度”は上だ。
もちろん、カーティスの音楽そのものが好きだということが大きいが、上記2人が現在もキャリアと実力に見合った音楽的、社会的評価を受け、充実した余生?を送っているのに比べ、カーティスの場合、野外コンサート会場での照明機材の落下による頚椎損傷という悲劇的な事故(90年)、そして、57歳という若すぎる死(99年)に対する個人的なやりきれなさが彼に対する一方ならぬ思いの強さにつながっていないといったら嘘になるかもしれない。
この項続く

黒澤明監督の『悪い奴ほどよく眠る』を国内盤DVDで観た感想。

悪い奴ほどよく眠る』(60年)
監督:黒澤明 
脚本:小国英雄、久板栄二郎、黒澤明、菊島隆三、橋本忍 
撮影:逢沢譲
音楽:佐藤勝
出演:三船敏郎、森雅之、香川京子、三橋達也、志村喬、西村晃、加藤武、藤原釜足

初見。
さすが黒澤。
とにかく面白く、全篇ほとんど息つく暇もない。
黒澤には珍しい社会派サスペンスで、黒澤作品の中では上位に位置する作品ではないのかもしれないが、世間的広しと言えどもこれほどの作品が他にいくつあるのかと言いたくなるくらいの傑作である。

キャストも、三船敏郎が良いのは当然として、香川京子の可憐さが魅力的であり、加藤武もいいキャラクターだ。
西村晃藤原釜足の少々大時代な演技(メーキャップ含む)が決して作品の中で浮いた印象になっていないし、ヘンに分別くさくやられるよりもよっぽどいい。
それはそうと、副総裁岩渕を演じたのが森雅之だとは全く気づかなかった。

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マサヤ
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趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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