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もはや語り尽くされた感のある名盤中の名盤であり、私が付け加えることなど何もないが、先年亡くなった大滝詠一を今さらながら追悼する意味合いも込めて、私なりに発売当時のことを振り返ってみたい。
このアルバム、CDとなった現在では分かりにくいかもしれないが、アルバムの半数に及ぶ前半5曲(A面)の作曲、編曲を大滝詠一が担当している。(編曲者名の多羅尾伴内は大滝の別名)
B面の5曲は大滝以外の作曲者(財津和夫、鈴木茂、杉真理)によるものであり、A面に劣らぬ内容を誇るが、大滝の担当したA面のインパクトがあまりにも強く、まるで大滝がアルバム全曲書いたようなイメージすらあった。
大滝詠一といえば、同年に発表した『ロング・バケイション/A LONG VACATION』(81年)が日本ポップス史上に残る超名盤として知られているが、私の人生における数少ない誇れることの一つが『A LONG VACATION』をリアルタイムで聴いていたことである。
81年の夏、行きつけのレコード店にいつもオリコンのチャート表が掲示されていたのだが、アルバムチャートで毎週のように3位前後に付けていたのが『A LONG VACATION』だった。
もちろん、大滝詠一なる人物など知る由もないし、音も聴いたこともなかったのだが、ジャケットのオシャレなイラスト(永井博デザイン)に子供心に惹かれてLPを買ったのだった。
チャート上位にずっとつけているくらいだから、内容も悪くないに違いないという期待もあった。
ちなみに当時のアルバムチャートの1位はずっと寺尾聰の『Reflections』だったが、そちらには全く興味がなかった。
それどころか、『Reflections』のせいで聖子さんのサードアルバム『Silhouette 〜シルエット〜』は2位どまりで1位になれなかった。
興味がないどころか憎んでいたといっていい。
それはともかく、『A LONG VACATION』を聴いて、すぐに気に入ったのは言うまでもない。
とにかく音の良さにびっくりした。
レコードの音質もそうだが、なんというか聞こえてくる楽器の音の良さに驚いたのである。
もちろん、楽曲も素晴らしかった。
7月か8月くらいに買ったということもあって(発売は3月)、特にリゾート気分満載のA面は時期的にもピッタリだった。
『君は天然色』の冒頭のピアノの音からあのイントロが始まる高揚感、あのサビの盛り上がり、『カナリア諸島にて』の歌い出し♪薄く切ったオレンジをアイスティーに浮かべて♪という歌詞の洗練されたイメージなど、初めて聴いた当時の記憶はいまだ鮮明である。
B面も、特に『雨のウェンズデイ』と『恋するカレン』は最高だった。
『雨のウェンズデイ』は個人的にいまだにフェイヴァリット・ソングの一つである。
すっかり大滝ファンになった私は旧譜の『NIAGARA MOON』『NIAGARA CALENDAR』も買って聴いたし、以後は『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』、インスト盤『NIAGARA SONG BOOK』(共に82年)、『EACH TIME』(84年)と聴いていくことになる。
共に大滝ファンだった友人は『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』を聴いて佐野元春のファンになったが、私自身は大滝の他のアルバムに『A LONG VACATION』に匹敵する魅力を見出すことができず、次第に大滝の音楽から離れていった。
前置きが長くなったが、聖子さんのアルバム『風立ちぬ』は『A LONG VACATION』と同じ年(81年)、それもたった半年後に発表されているのである。
この頃の大滝の旺盛な創作力に驚くほかない。
それにしても、当時人気絶頂のアイドル、聖子さんの曲を『A LONG VACATION』の大滝詠一が書くことになるとは!
この二人が繋がることになるとは『A LONG VACATION』を聴いた当初は考えもしなかった。
結果的に大滝はアルバムの半数、5曲の楽曲を書く。
そして、その5曲を含むこのアルバムはまさしく日本音楽史上に残る金字塔となったのだ。
(以後続く。全4回予定)
最近ふと思った。
ルネ・クレマンは我々が思っている以上に凄い監督なのではないか?
もっと言うと、好き嫌いは別として戦後フランス映画最高の監督なのではないか?
もちろん、私はルネ・クレマンの作品を全て観ているわけではないので断言はできないのだが、これまで観てきた作品の質の高さから顧みるに、あながち間違いではないような気がしてきているのである。
いつになるか分からないが、いつかそのあたりも検証してみたい。
そんなこんなで、買ったままずっと観ていなかった『禁じられた遊び』の国内盤ブルーレイをようやく観た。(『禁じられた遊び』について以前書いた記事)
映画の内容については今さら言うまでもないので割愛。
ブルーレイということで気になるのは画質だが、物凄く画質が良いという印象は正直言ってなかった。
ただ、これまで観てきた『禁じられた遊び』のDVDとは比べ物にならないくらい高画質なのは間違いないので、失望するようなことはないと思う。
それに、このブルーレイは本編音声を世界的エンジニアのオノ・セイゲンが新たにリマスタリングしたということで、音質が明らかに良くなっている。
これは冒頭のイエペスのギターの音で明白である。
そして、このブルーレイは、特典映像にこの映画のオープニングとエンディングの別バージョンが収録されているのがミソ。
アマゾンの内容紹介には別バージョンのかなりの部分が記載されてしまっているが、ここでは未見の人のために内容については述べない。
もちろん私は初めて観たのだが、現バージョンで正解だったと思う。
ただ、観る人によって意見は分かれるかもしれない。
メンバーはマイルスの他はハンク・モブレー(ts)、ウイントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、ジミー・コブ(ds)。
私が聴いているのは4枚組のコンプリート盤。
もともとは2枚のアルバムとして個別に発売されていたが、2003年になってから4枚組のコンプリート盤が発売された。
オリジナルの2枚のアルバムでももちろん楽しめるが、コンプリート盤の方が当然曲数も多く、なによりこの素晴らしい演奏の数々にたっぷり浸れるのが良い。
最初の2枚ではカットされていたというハンク・モブレーのテナー・ソロもコンプリート盤では復元されているらしい。
このアルバム、フツーのジャズをやっているマイルス、という当たり前のようで当たり前でないアルバムなのが貴重である。
これほどオーソドックスなジャズをやっているマイルスのライヴ盤は決して多いとは言えないからだ。
もちろん、この後のウェイン・ショーターやらハービーやらトニー・ウィリアムスやらのクインテットも素晴らしいし、私も好きなのだが、時にあまりにテンションが高すぎて聴いていて疲れるのも確か。
それに比べると、このブラックホークのライヴ盤はどこかリラックス感がある。
それにこのアルバムはリズム・セクションが素晴らしい。
ことにジミー・コブのドラムスの“スイング感”と、ウイントン・ケリーの“明るさ”が演奏の色を決定付ける。
もちろん、マイルス自身の演奏の良さは言うまでもない。
マイルスのミュージシャンとしての魅力は何よりまずその美しい音色だと思うが、ここではミュート、オープンともに音色が素晴らしい。
ちなみにマイルス・クインテットにおけるハンク・モブレーは概して評判が良くないようだが、ここでの彼は我々がブルーノートの諸作で好む彼そのものに近く、思ったよりも伸び伸びとした好演が聴けるのが嬉しい。
松田聖子、初期の名曲『Only My Love』。
80年代前半に聖子ファンだった者にとっては極めて重要な楽曲である。
つまりは、聖子さんの歴史の中でも最重要曲の一つである。
アンセムだと言ってもいい。
この曲は80年12月1日に発売されたセカンド・アルバム『North Wind』に収録されており、シングル・カットはされていない。
しかし、当時のコンサートではいつもフィナーレに歌われる重要な曲だったし、聖子さんのDJによるラジオ番組『夢で逢えたら』(ニッポン放送)のオープニングにも使われていた。
この曲のイントロがかかると“松田聖子 夢で 逢えたら”という聖子さんの声がつい聞こえてきてしまうという人も多いはずだ。
ところで、当時のラジオというのは今では考えられないくらい重要な存在だった。
テレビで毎週歌番組があった時代ではあるが、当時は人気アイドルの多くは自分のラジオ番組を持っており、その本音やファンに対する直接的なトークが聞けるのはラジオだけと言ってよかった。
『夢で逢えたら』も聖子さんの飾らない素の人柄が自然に出た好番組で、私たちはこれを聴いてますます聖子ファンになったものだ。
毎週日曜日22時~22時半という放送時間帯は、このラジオを聞いていた人たちにとっては決して忘れられない時間帯である。
調べてみたら『夢で逢えたら』は81年4月から83年3月までの放送だったということだが、たった2年間の放送だったとはとても信じられない。
それくらい番組のインパクトが強く、もっと長く放送されていたような印象があるからだ。
このラジオ番組、今ならYouTubeで数回分聞くことができるが、若い頃の聖子さんの話し声のハスキーさに驚く。
もっとも、近年のコンサートでの聖子さんのトークは、年齢を経たわりには声にさほどハスキーな印象はなく、これも聖子七不思議の一つである。
1983年3月27日 ラジオ『松田聖子 夢で逢えたら』 最終回前半
言うまでもなく、番組の冒頭でかかるのが『Only My Love』のオリジナル音源。
皆様にご心配をおかけしました、と話しているのは沖縄でのファン襲撃事件のことだろうか。
沖縄の事件は3月28日だったはずで、そうなると日時が合わなくなるが・・・。
それはともかく、『Only My Love』が数ある聖子さんの名曲の中でも最も感動的な名曲であることは間違いない。
実際、聖子さんにはその手の名曲が多すぎるが、これは全キャリアを通じて別格の地位を占める楽曲であろう。
前述のように80年代前半のコンサートではいつもフィナーレに歌われる重要な曲であり、会場はファンの大合唱に満たされた。
歌詞も素晴らしく、“あなたと今この道 歩いてゆきたい”の“あなた”とは、聖子さんにとってはファンのことであり、ファンにとっては聖子さんのことなのだ。
もっとも、聖子さんが特にそう言ったというわけではないが、この歌がコンサートで歌われる瞬間、歌詞の意味合いがそこまで昇華される(?)のを確かに感じるのだ。
そして、私が特に好きなところは“庭に咲いたわ 小さな花 あざやかな色で 私の中 眠っていた愛に 火を付けてゆく”の件だ。
オリジナル音源(レコード)における“花”の歌い方、そして、“あざやかな”の“ざ”の歌い方が素晴らしすぎる。
『Only My Love』のレコードにおけるオリジナルキーは高い。
これは皮肉にもハイトーンを誇っていた当時の聖子さん自身を苦しめたようで、分かっている限りでは82年にはこの曲を歌う場合、キーを下げたようだ。
思えば、ただでさえキーが高くて苦しいのに、コンサートなどで20曲前後歌った後、フィナーレにこのオリジナルキーは殺人的だ。
声を守るためにもキーを下げたのは当然の処置だったろう。
オリジナルキーで歌った動画を一つだけ見つけたが、81年の殺人スケジュールで声を痛めている頃で、声が残念ながら出きっておらず、痛々しい。
しかし、当時の聖子さんがいかに真摯に歌に取り組んでいたかを示す貴重な動画なので紹介。(ニコニコ動画に飛びます)
次に、キーを落とした後の82年12月25日のクリスマスクイーン(伝説的な初の武道館コンサート)の動画を。
途中から登場する蜘蛛の巣みたいなセットはともかく(笑)、キーがどうだとかこうだとか言ってる場合ではないほど感動的な動画である。
ベタな表現だが、これを観ると『Only My Love』とは何より聖子さんとファンの心を一つにする歌であることが認識できるはずだ。
ちなみに、初武道館から31年後の2013年7月7日に行われた聖子さんの武道館100回記念コンサートでは、アンコールでこのクリスマスクイーンの映像をバックに現在の聖子さんが『Only My Love』を歌うという、初期のファンには堪らないシーンがあった。
聖子さんとファン双方にとって、この曲は今もなお現在進行形の歌なのである。
これも『フィルム・ノワール ベスト・セレクション フランス映画篇 DVD-BOX1』の中の一篇。
映画の舞台はほとんどが深夜で、画面は常に暗い。
ニコラ・エイエ(『マンハッタンの二人の男』『いぬ』)の光と影を活かしたキャメラが凄く、まさしくフィルム・ノワールと言いたくなるような暗黒映画だ。
ストーリーも大変面白い。
殺されたギャングの男に自分が瓜二つだったことから、刑事がギャングに成りすまして殺人事件の真相を探るという、いかにも映画的なストーリーだが、複数の女性たちを絡めて物語がどのように進むか見通せないところがかえって興味深く、惹きつけられる。
刑事役のルイ・ジューヴェは一人で映画を引っぱり、さすがの存在感である。
ヒロイン役のマドレーヌ・ロバンソンが美しい。
DVDの画質もまずまずといったところ。
フィルム・ノワールの名作として有名な映画だが、ようやく観ることができた。
以前IVCから出ていた国内盤DVDを所有していたが、あまりの画質の悪さに呆れて観ること叶わず。
今回観たジュネス企画盤も画質は良いというほど良くもないが、さすがにIVC盤ほどは酷くなく、さして問題なく観通すことができたという次第。
それにしても、やはりこれは傑作だった。
リチャード・ブルックスの原作は同性愛者の殺人を取り上げていたらしいが、映画化にあたって人種問題に変えられたらしい。
殺人事件に人種問題を絡めてくる点は、今観ても少々やりすぎの感もあり、公開当時3ヶ月で上映が禁止されたというのも分かる気がする。
しかし、だからこそこの映画が観客の興味を惹きつけたというのも事実であろうし、社会派ノワールと呼ばれる所以でもあろう。
ロバート・ヤング、ロバート・ライアン、ロバート・ミッチャムとロバート尽くしで揃った配役も魅力的。
とりわけ刑事役のロバート・ヤングが素晴らしい。
これまでほとんどこの人の出演作を観た記憶がないが、パイプを加えた姿も端正でサマになっており、冷静に事件を解決していく物腰が魅力的。
自分の祖父の話をする件はちょっと感動的だった。
あのグロリア・グレアムも出ており、登場時間はさほど多くないが、いかにも彼女らしい役柄で印象が強い。
殺人犯は意外とすぐに分かってしまうのが難といえば難か。(冒頭の“影"でだいたい分かる)
これも『フィルム・ノワール ベスト・セレクション フランス映画篇 DVD-BOX1』の中の一篇。
主演はジャン・ギャバン、その息子役にダニエル・ジェラン。
DVDの解説書によれば、レイモン・ラミ監督は監督作が2作しかなく、主にロベール・ブレッソンやサッシャ・ギトリの編集担当者として知られているという。
ちなみに、『面の皮をはげ』はその監督第2作目。
映画はいかにもジャン・ギャバン主演作らしい内容で、期待に違わぬ作品である。
ギャバンは、表の顔=実業家、裏の顔=ギャングという二面性を持ち、しかも過去にさらに別の顔を持つという難役を見事に演じている。
映画前半で、ギャバンが裏の顔で営業するキャバレーやカジノを動き回るシークエンスが、何がどうということもないのに面白く、いかにもフランスのギャング映画を観ているという充実感に浸れる。
また、付き合いのある刑事や、敵方であるマルセイユのギャングとの緊張感のある腹の探り合いも見ものである。
昔からギャバンを愛する女クレオを演じたコレット・マルス(Colette Mars)は本職(?)が歌手で、この映画でも歌手役を演じているが、彼女がシャンソンを歌うシーンがいい。
ボクサーの恋人役を演じたのは若き日のマルティーヌ・キャロル。
DVDの画質はまあ及第点。
特別悪くもないが、特別良くもない。
年代的な違いももちろんあるだろうが、前回レビューを書いた同DVDボックスの『ランジュ氏の犯罪』のような悪さではなかったのでとりあえず一安心。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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