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ジャック・ドレー監督の『フリック・ストーリー』を国内盤DVD(紀伊国屋レーベル)で観た感想。

FLIC STORY』(75年)
監督:ジャック・ドレー
原作:ロジェ・ボルニッシュ
脚本:アルフォンス・ブーダール、ジャック・ドレー
撮影:ジャン=ジャック・タルベ
音楽:クロード・ボラン
出演:アラン・ドロン、ジャン=ルイ・トランティニャン、クローディーヌ・オージェ、マリオ・ダヴィッド、レナート・サルヴァトーリ、アンリ・ギーベ、アンドレ・プース、モーリス・ビロー、ポール・クローシェ、マルコ・ペラン、モーリス・バリエ
 
再見。
実在の刑事であり、この作品の主人公でもあるロジェ・ボルニッシュが書いた原作を映画化したもので、ここで描かれているエミール・ビュイッソンという犯罪者も実在した人だという。
この作品は近年もテレビでよく放送されるので、内容ももうほとんど覚えているのだが、改めてDVDで観て内容の面白さに惹き込まれた。
70年代のフランス犯罪サスペンス(“フィルム・ノワール”と言いたいところだが、ちょっとニュアンスが違う気がする)の中でも傑作の部類に入る作品だろう。

まず、アラン・ドロンジャン=ルイ・トランティニャンの共演がこの作品の成功の最大の要因。
ことに犯罪者ビュイッソン役のジャン=ルイ・トランティニャンが強烈な印象で、この人の持ち味の一つである“無表情”が、殺しを全く躊躇しないビュイッソンという残忍冷酷なキャラクターに見事に活かされている。
なんというか、普段の無表情が効いているから、一瞬の表情の変化が観る者に劇的な強い印象を与えるのだ。

一方、アラン・ドロンの刑事役といえば、われわれはどうしてもメルヴィルの『リスボン特急』(72)を思い起こしてしまうのだが(双方のレストランのシーン!)、この映画のキャラクターはそれとはかなり異なる。
緊張感が全篇を支配した『リスボン特急』に比べれば、こちらはどこかユーモラスな雰囲気があり、刑事が仕事を楽しんでやっているような余裕が感じられる。
もちろん、これは元の原作がそうなのかもしれないが、トランティニャン演じるビュイッソンとの対比という意味で、これは効果的だったと思う。
ビュイッソンのコワさが引き立っているからだ。

あと、アラン・ドロンが全篇で着用した緑のトレンチコートは刑事のファッションとしては少々派手過ぎるように感じられるが、オールバックヘアーに緑のトレンチ、茶の靴という派手目の出で立ちがこの刑事のキャラクターを決定付けているといえるのかもしれない。
個人的に、ビュイッソンの兄役のアンドレ・プッスを病室で尋問するシーンが、プッスの好演もあって好きだ。

そのプッスを始め、レナート・サルヴァトーリポール・クローシェ等々から、脇役、端役に至るまで“70年代ドロン作品の顔”が軒並み顔を揃えているのはある意味壮観である。
ドロンの愛人役のクロディーヌ・オージェの艶やかさもいい。
見事に再現された40年代のパリの風景、街並みもこの映画の大きな魅力だ。

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ジャン・ルノワール監督の『フレンチ・カンカン』を国内盤DVD(東北新社)で観た感想。

FRENCH CANCAN』(54年)
監督・脚本:ジャン・ルノワール
撮影:ミシェル・ケルベ、クロード・ルノワール
音楽:ジョルジュ・ヴァン・パリス
出演:ジャン・ギャバン、フランソワーズ・アルヌール、マリア・フェリックス、フィリップ・クレイ、ヴァランティーヌ・テシエ

再見。
パリ・モンマルトルのキャバレー『ムーラン・ルージュ』オープンの由来をミュージカル・コメディ・タッチで描いた作品。
ジャン・ルノワール監督が『ゲームの規則』(39)以来15年ぶりに本国フランスで撮った作品だけに、祖国愛(?)に満ちた幸福感の漂う作品となっている。

正直なところ、退屈なシーンも無くは無いし、ルノワールの作品にしては深みが乏しい感はあるのだが、ラストのフレンチ・カンカンのシーンで全て吹っ飛ぶ。
それほどラストの盛り上がり、高揚感は圧巻。

ヒロインのフランソワーズ・アルヌールについては以前『大運河』(56)の記事で魅力が分からないようなことを書いたが、この作品のアルヌールは文句無くいい。
なんといっても表情の可憐さが魅力的。

ジャン・ギャバンの役柄は彼としては持ち味を発揮しきれているとは言い難いものの、かといって彼以外のダングラール役は想像がつかない。
ヒステリックなローラ役を演じたメキシコ人女優マリア・フェリックスと、司会役のフィリップ・クレイ(『殺られる』)が共にいい。

テクニカラーを生かした映像の色彩美は素晴らしいが、国内盤DVDの画質はそれを再現するにはいかにも物足りない。
リマスターされたDVDで是非味わいたい作品である。

e4173fe9.jpegコードネームはメルヴィル』と題されたジャン=ピエール・メルヴィル監督作品の日本初となる大規模な特集上映が11~12月に東京で組まれますことは既にこのブログでもお知らせ済みですが、11月に東京で開催されます『第10回東京フィルメックス』における上映作品が決まった模様ですのでお知らせいたします。

第10回東京フィルメックスの公式サイトはこちら(詳しい情報はコンテンツの上映作品コードネームはメルヴィル』の項を参照)

なお、第10回東京フィルメックスにおいては以下の4作品が上映されます。

◎『この手紙を読むときは』(53年、日本初上映)
◎『モラン神父』(61年、日本商業劇場初上映)
◎『フェルショー家の長男』(62年、日本初上映)
◎『ギャング』(66年)
(上映日時はいずれも未定)

言うまでもなく貴重な作品ばかりですが、『フェルショー家の長男』と『ギャング』は12月の東京日仏学院での上映予定に入っていないことから、ここでしか観られないというところががなんといってもポイントです。
もちろん、これが日本初上映となる『この手紙を読むときは』と、商業劇場で公開されるのは初めてとなる『モラン神父』の上映もそれに劣らぬ貴重な機会と言えるでしょう。

これで第10回東京フィルメックスと東京日仏学院において上映される作品の概要が一通り発表されましたが、一覧を見ますと『サムライ』(67)以外のメルヴィル作品が一挙に東京で上映されることになります。
メルヴィル作品のこのような大規模上映の機会はもちろん日本では初めてですが、これからもまずない、貴重な機会となるのではないでしょうか。

極めて個人的なことなのでブログに書くかどうか迷いましたが…こんなことも滅多にないと思うので書くことにします。

8月31日に双子の女の子の父親になりました。(これでも私は既婚者です)
二人とも元気に生まれてきたので何よりですが、自分の子供って想像していた以上に可愛いものですね。
親バカになる人の気持ちも分かります。

今後双子ブログにならないように気をつけようと思います。

P2_G4277032W.jpg個人的に好きなジャズCDということでフレディ・ハバードゴーイン・アップ』(ブルーノート)のご紹介。

FREDDIE HUBBARDGOIN'UP』(60年)
フレディ・ハバード(tp)、ハンク・モブレー(ts)、マッコイ・タイナー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

フレディ・ハバードの初リーダー作『オープン・セサミ』に続く第2弾。
フレディ・ハバードのリーダー作といえば、その『オープン・セサミ』(60)がとりわけ有名だが、その分、他のリーダー作の知名度との落差が激しいように感じる。
そのせいか、『オープン・セサミ』は事あるごとに再発売されているが、このアルバムなどは発売されることはあまり多くない。

しかし、ブルーノートらしい典型的なクインテット編成、しかも、これほど魅力的なメンバーが揃っていながらあまり知られていないのは不思議なほどである。
実際聴いてみても、いかにもハードバップらしいカッコいいテーマを持った楽曲ばかり揃っており、聴かないのが勿体無いくらいの素晴らしい演奏内容だ。

リーダーのフレディ・ハバードはこの頃はまだ力任せの傾向があるが、勢いのある力一杯の吹奏ぶりは聴いていて気持ちいい。
一方で、『I WISHED I KNEW』では見事なバラード演奏を聴かせてくれる。

他にはハンク・モブレーのテナーが素晴らしい。
この人のテナーはたまにフニャフニャして頼りなく聴こえることもあるが、この日は好調だったのか楽器の鳴りが良く、音やフレージングが実にハードボイルドだ。 
こんなカッコいいモブレーを聴いたのも久しぶりですっかり嬉しくなってしまった。

リズム・セクションも今更言うまでもない見事さであり、特にフィリー・ジョー・ジョーンズのドラムスが変幻自在の演奏でさすが。

ちなみに私が持っている国内盤CD(99年発、紙ジャケ&RVGリマスター)は現在廃盤だが、中古CD店やAmazonでは購入可能。
9月に国内盤が1100円で再発されるが、RVGリマスターでないようだ。

ジャン・ルノワール監督の『牝犬』を国内盤DVD(紀伊国屋書店)で観た感想。

LA CHIENNE』(31年)
監督・脚本:ジャン・ルノワール 
原作:ジョルジュ・デ・ラ・フシャルディエール 
撮影:セオドア・スパークル 
出演:ミシェル・シモン、ジャニー・マレーズ、ジョルジュ・フラマン

初見。
ジョルジュ・デ・ラ・フシャルディエールの原作を映画化したもの。
この原作は後にハリウッドでフリッツ・ラング監督によって『スカーレット・ストリート』としてリメイクされている(45)。(『スカーレット・ストリート』について以前書いた記事
私はリメイク版の方を先に観てしまったが、どちらも観た印象としては今度観たルノワール版の方がずっといい。
あまり知られていないが、実はジャン=ピエール・メルヴィルもこの作品のリメイクを計画していたらしい。(68年頃。結局実現せず)
それだけ魅力的な題材なのだろう。

それにしてもこのルノワール版はほとんど古さを感じさせない。
1931年の作品としては驚異的である。
ルノワールの演出も冴え渡っており、特に後半が素晴らしい。
ただし、主人公の妻アデル役の演技は少々やり過ぎ感も感じられなくはないが…。

キャストも、ミシェル・シモンはまさに適役であり、ヒモ男を演じたジョルジュ・フラマンが実にいい。
ヒロインのジャニー・マレーズはラング版のジョーン・ベネットに比べると“女としての魅力”は遥かに劣るのだが、役柄として違和感が感じられないのは不思議なくらい。
もしかしたら作品のヒロインのイメージに近いのはジャニー・マレーズの方かもしれない。

総じてラングの『スカーレット・ストリート』の方が描写が丁寧なのかもしれないが、ストーリー的に破綻の感じられないのはむしろこの『牝犬』の方だ。

ジャン・シャポー監督の『燃えつきた納屋』を国内盤DVDで観た感想。

LES GRANGES BRULEES』(73年)
監督:ジャン・シャポー
脚本:ジャン・シャポー、セバスチャン・ルーレ
撮影:サッシャ・ヴィエルニ
音楽:ジャン=ミシェル・ジャール
出演:アラン・ドロン、シモーヌ・シニョレ、ポール・クローシェ、ピエール・ルソー、カトリーヌ・アレグレ、ミュウ=ミュウ、クリスチャン・バルビエ

初見。
フランスのある寒村で起きた殺人事件を通して、農家の女主人ローズ(シモーヌ・シニョレ)と、事件の調査をする予審判事(アラン・ドロン)の心理的対立を描いた作品。

前半からいろいろ思わせぶりな前振りがあるので、面白くなりそうな雰囲気はあるのだが、期待したほどは面白くならなかったかなという印象。
サッシャ・ヴィエルニによる映像の美しさもあって、寒村や農家の雰囲気描写は魅力的だったのだが…。

ただ、アラン・ドロンシモーヌ・シニョレの演技と存在感は見ごたえがある。
とりわけシモーヌ・シニョレの演技力はさすがに大したものだと改めて思った。
その夫役を演じたポール・クローシェの存在感の無さもかえってその役柄に合っているのかもしれない。
地元の善良な警官を演じたクリスチャン・バルビエもいい。

また、ジャン=ミシェル・ジャールによるシンセサイザーを多用した音楽も効果的だった。

そういえば、この作品はシモーヌ・シニョレ、ポール・クローシェ、クリスチャン・バルビエとメルヴィルの『影の軍隊』(69)に出演していた俳優が3人も出ている。

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テンプレ作った人:おみそ
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プロフィール
HN:
マサヤ
性別:
男性
趣味:
フランス映画、ジャズ
自己紹介:
フランスの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィル監督作品のファンサイト附属のブログです。
メルヴィルを始め、往年のフランス映画やアメリカのフィルム・ノワールのほか、JAZZ、松田聖子など好きな音楽についても綴っています。
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